
MKTの歩き方
HOW TO HIKE
「歩く」というシンプルな楽しみ。
必要最低限の準備や心構え。
摩周・屈斜路トレイル(MKT)は阿寒摩周国立公園内にある全長62.5kmのトレイル。トレイルを歩き楽しむための必要最低限の準備や知識、ルールと安全対策について紹介します。
1. 事前の計画と準備
MKTは自然に包まれた未舗装路もあれば、延々と続く舗装路もあります。人の気配の無い自然道もあれば、生活道路、国道沿いを歩くこともあります。不十分な計画と装備では危険も伴いますので、通常の登山と同じ装備と心構えで歩いて下さい。
事前にトレイルの最新情報や気候と気温、警報・注意報の有無などをしっかり調べた上で、自分の体力・技術を過信せず無理のない計画を立てて歩きましょう。
2. 装備の確認
① 必ず持つべきもの(基本装備)
通常の登山と同じ装備一式(登山靴、ザック等)
・地図(常に現在地を把握し道迷いを防ぐ)
・雨具(上下)(雨風対策、マダニ対策を兼ねる)
・エマージェンシーシート (低体温症対策)
・携帯トイレ(公衆トイレのない区間があるため)
・行動食(万一の停滞やエネルギー不足への備え)
・十分な飲料水(水場の少ない区間があるため)
・長袖・長ズボン(紫外線、マダニ、ハチ、アブ対策/薄い色が推奨)
・クマ鈴(ヒグマとの遭遇を避けるため)
・ベアスプレー(遭遇時の備えとして携行を強く推奨)
・サングラス(年間を通じた紫外線対策)
②季節や状況によって追加するもの
・ツェルトなど(万一の停滞や急な雷雨から身を守るための装備)
・スパッツ(春から夏のマダニ対策、および春・秋の残雪や泥道対策)
・防虫ネット(7月中旬〜9月上旬のアブ発生時)

3. ルール
MKTを歩くハイカーが守るべき8つのルール
摩周・屈斜路トレイルは国有林、国道、道道、町道、農道なども含めて、関係者また地元の方々の理解により、成り立っています。誰もが心地よく歩けるようにルールを策定しました。
■免責事項
摩周・屈斜路トレイルのコース上で発生した事故やけが、損失については各個人の責任となります。この免責事項を許諾することで、トレイルへの立ち入りを可能なものとします。
①トレイルのルートを歩く
摩周・屈斜路トレイルは阿寒摩周国立公園内に位置しています。定められたルート以外の森林や畑、私有地などに入らないようにしましょう。特にアトサヌプリ(硫黄山)周辺は、阿寒摩周国立公園の中でも特別保護地区に指定されています。コース外を歩くと、農作物や植生などを損なうリスクがあります。畑への侵入は菌を持ち込むことになり、農作物に多大な被害を与える可能性があります。また大型の農機も通りますので、接触事故を避けるために十分に気を付けて歩くようにしましょう。
②動植物を大切にする
トレイル上で出会った動植物はそっと見守りましょう。保護の必要な植物も存在します。また野生動物には近づかず、餌を与えないでください。
③他人に配慮する
誰もが心地よくトレイルを利用できるように、地元の人々や他のハイカーに配慮した行動を心がけましょう。各コースのスタート・ゴール地点では所定の場所へ駐車をしてください。
④ゴミは全て持ち帰る
ゴミや残飯を野外に残してしまうと、それらを食べた野生動物が病気になったり、自分で餌を取ることができなくなります。餌付くことで人間に危害を加える可能性もあります。ゴミは必ず全て持ち帰りましょう。
⑤トイレは所定の場所を利用する
トイレは可能な限り、所定の施設をご利用ください。やむを得ない場合は携帯トイレを使用するなど、適切な場所と方法で処理をしましょう。
⑥下調べをして、計画とおりに歩く
トレイルを歩くことは全て各個人の責任となります。安全のためにも事前に歩行距離、天候、日没時間などの情報を収集して、計画を立てた後に歩きましょう。
⑦ヒグマの情報を収集して、十分に備える
ヒグマは北海道の広い範囲に分布、生息しています。出没情報や遭遇時の対応などを事前に確認し、トレイルを歩く際には熊鈴や笛、熊スプレーなどを携帯しましょう。
⑧野営はたき火は指定された場所で行う
摩周・屈斜路トレイルは国立公園内に位置しており、豊かな自然に囲まれたトレイルです。ありのままの自然を維持し、誰もが心地よく使える環境を維持するため、野営や焚き火はキャンプ場で行ってください。
摩周・屈斜路トレイルは、”Leave No Trace“の考え方に賛同し、7つの原則を遵守します。
4. リスク管理
「オウンリスク」という考え方
比較的なだらかな道がつづくMKTですが、大自然のなかには思いがけない危険が潜んでいます。準備不足が事故につながることもありますので、下記を徹底し、まず自分の身は自分で守りましょう。
・悪天候下でも耐えられる安全な装備、エマージェンシーキットを持って歩く。
・地図を携帯して常に現在地を把握しながら道に迷わないようにする。
・技術・体力、経験に応じた無理のない計画を立てる。
リスクの種類は様々です。事前にその対策イメージをしておくことが重要です。
①気象
・日射
初夏、夏は急激な気温上昇に伴い熱中症に注意が必要です。5月末や6月でも気温が突然30℃を超える日もあります。トレイル上、水の補給ができる場所までの区間はけっこう長いです。十分な水等を持って歩きましょう。年間を通じて紫外線の影響はあります。サングラス、肌を露出しない等、紫外線対策も忘れずにしましょう。
・雨(4月ー11月)
天気予報が晴れでも安心してはいけません。春・秋の不安定な天気、夏場における積乱雲発生に伴う急な雷雨など予測できない雨は多々あります。濡れによる低体温には要注意。濡れと風は一気に体温を奪います。雨具・行動食は必携です。万が一の停滞を考え、ツェルトなど雨風から身を守る用意もオススメします。また『怪我』にも細心の注意が必要です。トレイル上には雨が降るととても滑りやすくなる箇所が数多くあります。特に下り坂でのスリップには十分注意してください。
・雪(4月、5月、10月、11月、冬季間)
早ければ10月の中旬から降ることもあります。根雪(積雪状態が続くこと)になるのは例年12月中旬以降です。すっかり春と思ってもまだまだ気は抜けず、ゴールデンウィーク中でも朝起きたら真っ白なんていう日も珍しくはありません。春の残雪にも注意が必要です。残雪の山々は綺麗ですが、足元はグチャグチャ。そんな状況もあります。十分な装備と無理のない行動を。
②環境
・倒木
トレイルには老木や腐食した木などが多くあります。森の中を歩く時はもちろん歩道を歩く際にも倒木、落枝に注意して歩きましょう。
・交通事故
トレイル上には国道や道道などの車道を渡る場所もあります。信号のない場所での横断は車が来ないことを確認し、十分に注意しましょう。
③動植物
・ヒグマ
トレイル上、どこでもヒグマと遭遇するリスクがあります。車が走っている国道であってもそのリスクは変わりません。特に、見通しの悪い森の中などでは、こちらの存在を知らせるように鈴をつけたり、声を出して歩きましょう。万が一に備えて、ベアスプレーの携行を強くお勧めします。
ヒグマは普通、人の気配を感じると逃げるか隠れてやり過ごそうとします。ばったり出会わないことが大切です。早朝、夕暮れ、濃霧などで視界の効かない時、強風・大雨・沢沿いなどのお互いの音に気付きづらい時は、頻繁に手をたたくか声を出すようにしましょう。
まずは遭遇しないために、クマ鈴を鳴らす、悪天時や視界不良時の歩行を避ける等の対策を取ることをおすすめします。万が一遭ってしまった時は、落ち着いてヒグマから目をそらさずにゆっくりと後ずさりしながらヒグマが去るのを待ちましょう。 最終手段としてベアスプレーの使用がありますが、スプレーは5メートル以内の至近距離で噴射しなければならず、風向き等によっては使用できない場合もあります。ベアスプレーは事前に使用方法をよく確認しましょう。クマスプレーの使い方~正しく使って身を守ろう!~ – YouTube (制作:日本クマネットワーク)
・マダニ
春から夏にかけて活発に活動します。スパッツをつけたり、マダニが付きにくいレインウエア等を着て、対策をしましょう。
体長5mm前後で森の中に生息し、人や動物の身体から血を吸います。咬みつかれた際に無理に取り除こうとするとマダニの頭が皮膚内に残ってしまい、炎症や感染症を引き起こす恐れがあり、重症の場合は死に至ることがあります。病院の皮膚科に行って取り除いてもらってください。 予防のために長袖・長ズボンを着用する、スパッツをつける、マダニが付きにくい素材(レインウェア等)を着用するなどの対策を講じましょう。
・ハチ
近づいてきた時には、決して刺激せず静かに飛び去るのを待ちましょう。猛毒をもつスズメバチには特に注意が必要ですが、いずれのハチも毒性の強弱に関わらず刺されることで全身アレルギー反応(アナフィラキシー)になると死に至る可能性があります。もし刺された後に動悸が早くなったり、めまいを感じたら危険な状態にあります。その場合は至急、救急ダイヤル(119番)に電話してください。
・アブ
夏、気温の上昇に伴い発生します。7月中旬〜9月上旬にかけて注意が必要です。衣類の隙間など肌を露出している箇所や、薄い生地であれば衣類の上からも咬んできます。チクッとした痛みの後に酷い痒みがあります。特に黒いものに寄ってくる習性がありますので、なるべく薄い色の長袖・長ズボンを着用しましょう。発生状況が酷い時には防虫ネットが必要です。
どのように歩く?
楽しみ方はハイカーによってそれぞれ。木、植物、野鳥、野生動物、景観、アイヌ文化など注目すべき点はたくさんあります。ゆっくりと時間をかけて歩くことで、日常では感じることのできない感覚や気づき、新たな出会いがきっとあるはず。温泉や食事を楽しみに歩いてもいいし、カメラ片手に写真を撮りながら歩いてもいい。一人黙々と考え事をまとめるために歩いてもいいし、何も考えずに歩いてもいい。楽しみ方は十人十色。歩くことは究極の自由です。

デイハイクも、
スルーハイクも。
スタイルは人それぞれ。

歩く楽しみ、
十人十色。