MKTの歩き方
HOW TO HIKE
「歩く」というシンプルな楽しみ。
必要最低限の準備や心構え。
摩周・屈斜路トレイル(MKT)は阿寒摩周国立公園内にある全長50kmのトレイル。トレイルを歩き楽しむための必要最低限の準備や知識、MKTの四季を紹介します。
計画の立て方
1.いつ歩く?
摩周屈斜路トレイルがあるエリアは北海道の東、いわゆる「道東エリア」。比較的高低差の少ないエリアなので、老若男女、ハイキング初心者の方から楽しめる一方、四季の変化が激しく、寒暖差や天気の変化には注意が必要です。また、劇的に変化する四季があるからこそ、魅せてくれる自然の表情にも変化があるのも、このトレイルの魅力なのです。基本的に「オープン」といえる期間は4月末ゴールデンウィークから11月末まで。ただし、11月は突然の吹雪などの可能性もあります 。
➡︎ 川湯エリアの気象過去データ(気温と雨量の統計)
➡︎ 過去の天気(釧路)
➡︎ 過去の天気(網走)
MKTの四季。
春 4月ー5月
4月上旬、屈斜路湖の氷が割れ釧路川へ流れ出す頃、春がやってきます。福寿草や蕗の薹など足元から彩り始め、次第にキタコブシやエゾヤマザクラなどが咲き、モノトーンの森に徐々に彩りが広がります。
野鳥も活発な時期、歩く道すがらたくさんの囀りが聞こえます。山には残雪が美しく、平地から広がる春は見た目以上にエネルギッシュな季節です。
長い冬を越えた、植物、動物、人間もみな喜びに溢れる季節です。
夏 6月ー8月
6月上旬は新緑の季節。日に日に緑が増えていきます。野山では動物たちが子育てに大忙し。野生動物の子供たちに出会えるチャンスもあるでしょう。
この季節の晴れた日の気持ちよさは何にも代えがたく、寒くもなく暑くもない、いわゆる「北海道らしさ」全開です。しかし、近年梅雨前線の北上に伴い、梅雨のようにグズついた天気が続きやすいのも最近の状況。暑い日と寒い日に大きくムラがあります。不安定な6月を経て、北海道に短い夏がやってきます。摩周屈斜路トレイルのフィールドは道内でも比較的気温が上がりやすいエリアです。30度を超える日もしばしば。熱中症には十分注意が必要です。暑い日は屈斜路湖で湖水浴も良いかもしれませんね。
秋 9月ー11月
気圧配置は安定せず、不安定で風の強い日も多いのがこの季節。朝晩の冷え込みも厳しく、氷点下の日もよくあります。寒暖差が激しく、日中でも気温一桁の日もあれば25度以上の夏日になる日も珍しくありません。
お盆過ぎれば、もう秋。徐々に朝晩の冷え込みが強くなってきます。春と同様に寒暖差が激しいのがこの時期です。植物も動物たちも長い冬に向けて準備を始める季節。
標高の高い場所から徐々に色づき始め、湖畔沿いが紅葉のピークを迎えるのは例年10月下旬頃。11月上旬、カエデなど広葉樹の葉がほぼ全て大地に落ちる頃、カラマツが黄金色に色づき、紅葉シーズンのフィナーレを飾ります。遥かシベリアからは越冬のため白鳥たちが飛来。野山からは繁殖期を迎えた雄鹿の声が響きわたります。冬に向かって足の早いドラマチックな季節です。
冬 12月ー3月
例年12月末になると雪が積もり根雪になります。冬至のころから2月にかけてが、一年で最も寒い季節です。その頃、屈斜路湖は全面結氷。摩周湖も数年に一度全面結氷します。
冬晴れが多く、厳しい冷え込みで最低気温が-30℃近くまで下がる日もあります。最高気温も氷点下ですが、晴れていれば太陽の光が強いので、気温以上にポカポカと暖かく感じます。しかし、ほんの数日だけ猛烈なブリザードがやってくるので注意が必要です。
※冬季のトレイルは雪の中。基本的には閉鎖しています。仁伏半島のトレイルは積雪時にはスノーシューで歩くことが可能ですが、道迷いには十分注意してください。
2.どのくらい歩く?
デイハイクも、スルーハイクも。
スタイルは人それぞれ。
全長50km(2024.9現在)の摩周屈斜路トレイルの歩き方は様々です。例えば、テント泊や宿泊施設を利用しながら一度の旅としてスルーハイク(全行程を歩く)してもいいし、予定に合わせてセクションハイク(部分的に歩く)してもいい。もしくはさらに短くスポット的にハイキングするのも楽しみ方のひとつです。それによって準備も大きく変わります。参考までに、スルーハイクする場合の1日に歩く距離の目安としては15km〜20kmほど。所要時間は6〜8時間ほど。これはあくまで1つの目安です。
3.どのように歩く?
歩く楽しみ、十人十色。
楽しみ方はハイカーによってそれぞれ。木、植物、野鳥、野生動物、景観、アイヌ文化など注目すべき点はたくさんあります。ゆっくりと時間をかけて歩くことで、日常では感じることのできない感覚や気づき、新たな出会いがきっとあるはず。温泉や食事を楽しみに歩いてもいいし、カメラ片手に写真を撮りながら歩いてもいい。一人黙々と考え事をまとめるために歩いてもいいし、何も考えずに歩いてもいい。楽しみ方は十人十色。歩くことは究極の自由です。
歩く上での心構え
MKTは自然に包まれた未舗装路もあれば、延々と続く舗装路もあります。人の気配の無い自然道もあれば、生活道路、国道沿いを歩くこともあります。不十分な計画と装備では危険も伴いますので、通常の登山と同じ装備と心構えで歩いて下さい。
1.事前に情報収集と無理のない計画を
事前にトレイルの最新情報や気候と気温、警報・注意報の有無などをしっかり調べた上で、自分の体力・技術を過信せず無理のない計画を立てて歩きましょう。
➡︎ 最新情報を知る
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2.守るべきハイカールール
どのようなルールがあるのか?どのような配慮が必要なのか?事前に確認しましょう。
➡︎ ハイカーが守るべきルール
➡︎ Leave No Traceとは?
3.この地で暮らす人への配慮
トレイルは地域で暮らす方の生活道路も含まれています。広い農道でも農作業の大型トラクターなどが通行する際には進路を譲りましょう。私有地、畑、牧草地などには立入らないようにしてください。特に、畑に立ち入ることにより、靴に付着していた土壌病害虫(線虫)等が畑に侵入し、農作物に被害が及んでしまうことがありますのでご注意ください。
4.国有林林道区間の通行について
国有林林道(摩周湖第一展望台〜美留和駅までの一部区間)は、施業のため大型車両が通行することがありますので、十分注意して通行してください。場合によっては閉鎖されることもありますので、必ず最新情報をご確認ください。
存在するリスク
MKTは大きな高低差もなく、全体的に歩きやすいトレイルです。しかしそこに潜むリスクは必ず存在し、その種類も様々です。事前にその対策イメージをしておくことが重要です。
1.気象
・日射
初夏、夏は急激な気温上昇に伴い熱中症に注意が必要です。5月末や6月でも気温が突然30℃を超える日もあります。トレイル上、水の補給ができる場所までの区間はけっこう長いです。十分な水等を持って歩きましょう。年間を通じて紫外線の影響はあります。サングラス、肌を露出しない等、紫外線対策も忘れずにしましょう。
・雨(4月ー11月)
天気予報が晴れでも安心してはいけません。春・秋の不安定な天気、夏場における積乱雲発生に伴う急な雷雨など予測できない雨は多々あります。濡れによる低体温には要注意。濡れと風は一気に体温を奪います。雨具・行動食は必携です。万が一の停滞を考え、ツェルトなど雨風から身を守る用意もオススメします。また『怪我』にも細心の注意が必要です。トレイル上には雨が降るととても滑りやすくなる箇所が数多くあります。特に下り坂でのスリップには十分注意してください。
・雪(4月、5月、10月、11月、冬季間)
早ければ10月の中旬から降ることもあります。根雪(積雪状態が続くこと)になるのは例年12月中旬以降です。すっかり春と思ってもまだまだ気は抜けず、ゴールデンウィーク中でも朝起きたら真っ白なんていう日も珍しくはありません。春の残雪にも注意が必要です。残雪の山々は綺麗ですが、足元はグチャグチャ。そんな状況もあります。十分な装備と無理のない行動を。
2.環境
・倒木
トレイルには老木や腐食した木などが多くあります。森の中を歩く時はもちろん歩道を歩く際にも倒木、落枝に注意して歩きましょう。
・交通事故
トレイル上には国道や道道などの車道を渡る場所もあります。信号のない場所での横断は車が来ないことを確認し、十分に注意しましょう。
3.動植物
・ヒグマ
トレイル上、どこでもヒグマと遭遇するリスクがあります。車が走っている国道であってもそのリスクは変わりません。特に、見通しの悪い森の中などでは、こちらの存在を知らせるように鈴をつけたり、声を出して歩きましょう。万が一に備えて、ベアスプレーの携行を強くお勧めします。
・マダニ
春から夏にかけて活発に活動します。スパッツをつけたり、マダニが付きにくいレインウエア等を着て、対策をしましょう。
・ハチ
近づいてきた時には、決して刺激せず静かに飛び去るのを待ちましょう。猛毒をもつスズメバチには特に注意が必要ですが、いずれの蜂も毒性の強弱に関わらず刺されることで全身アレルギー反応(アナフィラキシー)になると死に至る可能性があります。もし刺された後に動悸が早くなったり、めまいを感じたら危険な状態にあります。その場合は至急、救急ダイヤルに電話してください。
・アブ
夏、気温の上昇に伴い発生します。7月中旬〜9月上旬にかけて注意が必要です。衣類の隙間など肌を露出している箇所や、薄い生地であれば衣類の上からも噛んできます。チクッとした痛みの後に酷い痒みがあります。特に黒いものに寄ってくる習性があります。発生状況が酷い時には防虫ネットが必要です。