脳内歩行 #01 ロングトレイル

文・写真:土屋重敏  編集:MKTマガジン

人生だって「道」である。登ったり、下ったり、右か左か迷ったり。ときには走ったり、立ち止まって、振り返ってしまうこともある。ゴールが見えていないのも、人生の「道」の性。ある人物の「道」に焦点を当ててみた。約30年ガイドとして歩み続け、この弟子屈の土地に無数の足跡を残してきたマメさんだ。長い間歩いてきて、いま思うこととは。題して「脳内歩行」 ふらり一緒に歩いてみませんか?

#01 ロングトレイル

春の訪れとともに仕事、諸々会議とか、いろいろなことが動き始め忙しい。そんな中、うっかりこの原稿を書くことを引き受けてしまった。書くことが定まらず、自分のうっかりを悔やんで本気で困っていたら過去のトレイルとの関わりについてをいろいろと思い出してきた。

僕のロングトレイルとの関わりは、長距離自然歩道AKwayがはじまりだった。AKwayについて、多くの方の記憶からは消えてしまっているかもしれない。AKwayの整備に関わったメンバーのひとりだった僕の記憶も、この原稿を書くまでは少し曖昧なままだった。

AKwayのAは網走市、Kは釧路市を表している。網走から釧路まで、2つの海を繋ぎ2つの国立公園を通る211キロのロングトレイルだった。2007年には開通してCompleteWalker養成講座、トレラン大会も何回か開催していた。しかし、諸事情によりひっそりと消滅してしまった。

当時はロングトレイルはあまり広く認知されていなかった。同時進行するように造られていた北根室ランチウェイ(KIRAWAY)が開通する頃にようやく時代が追いかけてきた。KIRAWAYは注目を集め、全国からたくさんのハイカーが訪れるようになった。そんなKIRAWAYも残念ながら全線は歩けなくなり、KIRAWAYの名は消えてしまった。

トレイルの現実はなかなか厳しく、私有地、国有林の問題など、解決しなければならない難題が次々と現れる。僕らもいつも頭を抱えてしまっている。今年のトレイル整備もそろそろ始まろうとしている。摩周・屈斜路トレイルは取り組みを始めて5年目。今年はなんとか美幌峠まで繋げたい。

AKway、KIRAWAYともに、二人の先駆者が熱い情熱で作り上げたトレイルだ。僕らも、どうにもならないことを嘆いてばかりいられない。情熱を忘れずに前を向いて今できることを考えて行こうと思う。

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Writer

土屋 重敏(つちや しげとし)

愛称は“マメさん” 長野県東御市(旧東部町)生まれ。家は兼業農家、父は長野県伝統工芸士。幼少期は山が遊び場だった。高校まで地元で過ごし、大学進学で埼玉県へ。電気電子工学を専攻したけれど、馴染めずにモヤモヤした学生時代を過ごす。

時代はバブル絶頂期、山ほど就職先はあったけれど、ドロップアウトして自分探しの旅へ。アラン・ムーアヘッドの「恐るべき空白」を読み、荒野に行ってみたくなりオーストラリア北部へ自転車旅行。気温40℃のサバンナ地帯を乾季から雨季にかけて2カ月ウロウロ。帰国後、北海道に行きたくて、ついでに南の波照間島も目指し、日本列島を2年程ウロウロ。

そんな生活から抜け出し、都内のアウトドアショップで勤務。毎年、夏と冬に長期休暇をいただき北海道へ通う。当時は東京~釧路間がフェリーで繋がっていた(約30時間)※近海郵船 東京~釧路間のフェリーは今はもうないけれど、釧路市博物館で模型として展示されている。

都会の生活にも飽きてきたので、1995年に北海道へ移住。以来、ガイドを生業として、季節労働、山川湖で遊ぶ暮らし。未だ自分が見つからない。

NPO法人てしかがトレイルクラブ代表理事
リバー&フィールド代表
北海道アウトドア資格(カヌーガイド)
アトサヌプリトレッキングガイド

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