MKT FOOD GUIDE #03

「MKTの魅力は、地元の人に触れ、地元の食を楽しんでこそ」そう語る國分知貴は、MKTマガジンの編集長。ルート上、唯一の街である「川湯」にどっぷり浸かる2泊3日の “飲兵衛グルメハイキング” を提案します。

旅に出たら、その土地のグルメを味わい尽くす。これが僕のスタイルです。旅先では地元臭が強めなスーパーを探し、面白い食材を調達しては料理の献立に組み込む。お店を利用する場合は、地元民が集まりそうな飲み屋の匂いを嗅ぎ分け、暖簾をくぐる…。食を通じて旅が深まるというものです。

ロングトレイルも然り。できるだけ市街地を経由して「食」の計画も考えます。ではMKTでは?ここからは僕なりの「飲兵衛グルメハイキング」の提案です。

1日目は川湯温泉の宿に泊まり、温泉街の飲食店をディープに掘って欲しい。全国屈指の硫黄泉で汗を流した後、ほてった身体にキンキンのビールを流し込む。お気に入りのお店にふらり入り、ローカルの会話に耳を傾ける。カウンターに座れば、町のいろんな情報を入手できます。

2日目の行程は、思い切ってものすごくライトにして、明るいうちから砂湯でキャンプ。湖畔を眺めながらビールをもうひとつ、リラックスタイム。3日目は一気に和琴半島まで….そんな2泊3日の計画(2025年春に美幌峠まで開通すれば3泊4日)いかがでしょうか。

ーーーーーーーーーーーーーーー

山小屋風の木造駅舎がかわいい。すぐ横には足湯もある川湯駅。

1日目のスタートは、それほど急がなくてもOK。昼過ぎにJR川湯温泉駅、というのが理想。駅前には、個性を感じるお店が揃っています。パン屋、カフェ、ケーキ屋、洋食屋、酒屋、骨董品屋… 川湯愛に溢れたそれぞれの店主が出迎えてくれます。川湯駅前のこの雰囲気、ちょっとしたお祭りの縁日みたいで、すごくいいんです。

地酒はもちろん、厳選された全国各地の日本酒が並ぶ西沢商店。圧巻の品揃え。

駅前の店をハシゴしながらたっぷり休憩したら、さぁ川湯温泉までのんびりと歩きます。ここからのルートは変化に富んだまさに火山の道。急がず、味わいながらゆっくりと。

青葉トンネルを抜けて、いちばんの見どころである硫黄山をゆっくり楽しんで、つつじヶ原を通って、夕刻、川湯温泉街に入る。温泉で汗を流し、さぁ、こっからがメインイベント!? 川湯温泉夜の街へ。

まずは、味楽寿司へ。昔から川湯を見続けている、町の寿司屋さんです。ぜひカウンターに座って、大将の人柄を感じて欲しい。

あの「大鵬」がよく訪れていた味楽寿司

大将自らが釧路の市場で目利きしたネタの数々は間違いありません。それから、僕のオススメはなめこの軍艦。お手製の漬けなめこが載っているんだけど、ひと通り食べた後、これで締めるのが僕のスタイル。

大将お手製の漬けなめこの軍艦

1軒目としてもうひとつ紹介したいのが、居酒屋「いなか屋 源平。ここの名物は「げんコロ」 これは絶対はずせない。使用しているのは川湯産のじゃがいも。ザクッと荒めの食感がやみつきになります。

ソースではなく塩だけで、シンプルに芋のうまみを味わいたい。

あと、僕が好きなのは噴火ラーメン。さっき硫黄山の噴煙を見たばかりでつい引き込まれてしまいます。辛いもの好きは是非。ちなみに僕はそこそこの辛い物好きだけど、中噴火で顔から汗が止まりません。

あなたの好みにあった噴火具合を。

それから、駅前の西沢商店で眺めた日本酒ラインナップがここで飲める、というのもいい(もちろん味楽さんやまるはちさんでも飲める)。地域のつながりを感じます。ここらの地酒は「北の勝(根室)」か「福司(釧路)」のどちらか。ぜひ一杯やっていただきたい。

地酒を味わうのは旅の醍醐味ではないだろうか。

さて2軒目は、まるはちへ。イメージ的には、ビールと串を何本か〜なんだけど、これまたチャーハンがうまいし、釧路の細ちぢれ麺を使った醤油ラーメンもうまい。つまり1軒目としても使いたいわけで、どこでお腹を満たすのか……悩みます。そうだ、この際、川湯温泉に2泊してしまおうか…なんて選択肢も悪くありません。

まるはちの店内。この日も大賑わい。
このチャーハンがうまい!お酒に合うちょっと濃い味。

で、ここからは3軒目。気軽に利用できるTANTO(ダーツ&カラオケバー)か、もっと深堀りしたい方はスナック(ざっく安堵ばらん、またはCOCO)も良い。店内が見えないので、慣れない方は少し勇気がいるかもしれませんが、心配ご無用。思い切ってドアを開けてみよう。スナックには地方の情報が詰まっていると言っていい。そして、古き良き昭和の温泉街の香りを感じることができるはず。

宿をとったのならば、ぜひ浴衣姿で温泉街を闊歩したい。そしてぜひ川湯の昔話を聞いてみてください。移りゆく川湯をみてきた、そしてこれからの川湯を考えている個性豊かなマスター&ママが深〜い話をしてくれるはず。

味楽寿司の大将はこう語ります「昔はみんな、浴衣姿で来てくれた。通りからは下駄の音が聞こえてきてね。だから今も浴衣で来てくれる人がいると嬉しくなるんだよ」なんて。そんな話を聞いて、郷愁に浸るのもいいでしょう。深い時間まで温泉街を満喫したら、翌朝もスロースタートで大丈夫。セイコーマートで買い出ししてから出発しても、昼過ぎには砂湯(キャンプ場)に着きます。

砂湯のキャンプ場は広い。バックパックひとつのハイカーなら、混雑を避け離れた場所も選べる。

砂湯の売店には、ソフトクリーム、おつまみ、そしてビールもある(営業時間は17時までなので、それまでに買い込んでおく)。テントを設営したらさてさて、お楽しみタイム。屈斜路湖を眺めながら、のんびり過ごそう。1日目は人と酒を楽しんだとするならば、2日目は自然と酒を楽しむ。そんな感じだろうか。

3日目は和琴半島or屈斜路プリンスを目指すのみ。SOMOKUYAのミナソコマーケットに立ち寄って、鈴木さん(鈴木干肉店)の鹿肉ジャーキーをぜひ。行動食になるのはもちろん、乾物なのでお土産にもオススメ。

旦那さんが狩猟したエゾシカを、奥さんが加工している。鈴木干肉店のアウトアンドジャーキー。

さて、いかがでしたか、この贅沢グルメハイク。歩く日は歩く。だらだらする日はだらだらする。メリハリのある感じがいいんです。ただ、この楽しみ方だと、いくら歩いても体重は減るどころか増える可能性のほうが高いですけどね(笑)。これは僕の考えですが、美味しいものはいつ食べても美味しいのだけど、それまでの過程を楽しむことでその風味は一層増す。

MKTに関連づけて言うと、1日中、地に足をつけて歩いてきたわけです。つまり、思い返した時に、見てきた自然や植生、地形や高低差だったり、土地の自然背景を身体全体で理解し、鮮明にイメージできることでしょう。その状態で、1日の終わりにその土地のエネルギーを蓄えた食材、料理をいただく。それは格別に美味しいわけです。僕が思う最大限の食へのアプローチです。

自分の足で歩けば、濃度と俯瞰度が増す。「なるほど『火山と森と湖の国立公園』とは、よく言ったものだ」と合点がいく。それはきっと、ゆっくりと地に足をつけて歩かないと、実感できないことなのだと感じています。この魅力に気づいて、じっくりとその土地の自然を楽しむ人がもっと増えたらいいですね。

全ルートマップはコチラ

※ちょっとプチ情報(2024年10月現在)
18時ごろの夕食時、川湯温泉街の飲食店は大変混雑します。予約可能な飲食店は事前予約が絶対にオススメ。18時開店後まもなく、すぐに満席になってしまうお店が多いです。「源平」さんは予約不可なので、開店と同時に行かないと入れないこともしばしば。また、温泉街の特性から来店のタイミングが重なってしまうことが多いので、料理の提供に多少時間がかかってしまう場合もあります。

※青字で印した各店舗や場所は、編集部の独断で「この情報が一番オススメ」と思うものをリンクしています。営業時間や定休日は変更することもありますので、訪ねる際にはご自身でご確認ください。

  • URLをコピーしました!

Writer

『MKT MAGAZINE 』とは、摩周・屈斜路トレイル(MKT)を歩くことが『もっと面白くなる』マガジン。

総距離50km(2023年4月現在)のトレイル上とその周辺には、
火山、湖、温泉、それらがつくりだす独特な自然景観と植生、
アイヌの歴史、そして現在ここで生活する人々の暮らしなど
この土地ならではの魅力と物語が詰まっています。

『MKT MAGAZINE 』ではその魅力をよく知る人々、MKTを愛する人、摩周・屈斜路のフィールドを愛する人と共にMKTならではの情報を発信していきます。

目次