文・井出千種 写真・國分知貴
山アリ、森アリ、湖畔アリ、etc. 摩周・屈斜路トレイル(MKT)の整備はどのように行われているのだろう? 木々の緑が濃さを増し、ササが生き生きとし始めた初夏のある日、MKTの整備の1日に密着してみた。
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6月14日(金)曇り。8時30分に、MKT Section 1近く、美留和湧水の駐車場に集合。この日のメンバーは、5名。本日のリーダー・青木崇さん(カヌーガイド)、蔵崎恒寛さん(アウトドアガイド)、藤原仁さん(カヌーガイド、TTC副代表)、貴田元寛さん(サイクリングガイド)、岡田瞳さん(猟師)という顔ぶれ。

熊除けスプレーも必須だ。
今日のフィールドは、摩周湖第一展望台から石山林道まで、約9キロの区間だ。「標識が倒れているところがあるようです。倒木はないので、チェーンソーは必要ないですね。長い区間ですが、頑張りましょう」。点検チームが作成したレポートを元に、青木さんが今日の内容を伝える。
午前中は、摩周湖第一展望台から美留和林道入口まで、2人(A班)と3人(B班)に分かれて作業することになった。「僕とクラ(蔵崎)さんは上(摩周湖第一展望台)から、3人は下(美留和)から上がってきてください。そうすれば、車回しの必要がないですからね」

A班は一台の車に乗り込み、途中のコンビニで昼食を買って、9時20分に摩周湖第一展望台の入口に到着する。リュックを背負い、ベルトに手ノコを差し、刈払機を手にして、いざスタート。「結構伸びてるなぁ、今日はやりがいがあるぞ」

操作方法や整備方法についての講習を受けることが必須。
美留和林道入口に向かうトレイルは、森の中の登山道。道を塞ぐように伸びている草を、2人で手分けして刈っていく。「とにかくササ、刈るべきはササ。道の端にエッジが出せれば、きれいなトレイルになります」2人が刈った後には、小さな花が姿を表す。「アザミやハンゴンソウなども。花は残して刈っていきます」

草の匂い、森ならでは湿り気を感じ、季節の移り変わりに思いを馳せながら作業する。

倒木については、ケースバイケースで考える、というのもMKTのこだわりだ。場合によっては、乗り越えたり、木の下をくぐったり……アスレチック気分が楽しめることもあるから、と。

ひたすら無言で刈り続けること1時間。途中で休憩を挟み、さらに20分ほど続けたところで、B班と合流した。

貴田「(サンバイザーは)ラクかなぁ、って思って。メガネみたいに気にならないし、視界を遮られることもないでしょう。ネットで検索していると、草刈りグッズって、いろんな種類があるので、あれこれ見ながら、安くて使えそうなヤツを選んでます。このベストもそう」

とっさの時に1アクションで使えるようになっているのがミソ。
仮払い作業中は音が聞こえないので、ホイッスルで仲間に合図を出します。

岡田「冷感素材のネックカバー、おすすめです。草刈りって、いろんなものが飛んでくるんですよ。もちろん虫対策にもなる。暑い日は川にぐしゃっと浸けて、冷感効果をアップすることもできます」
それぞれのこだわりを感じる、機能を重視した整備スタイル。刈払機を背負う姿は、なんだかとってもカッコいい。

「倒れていた標識はわかりましたか?草で標識が隠れているところは、ハイカーから見えるように刈りましょう」A班とB班、お互いに情報交換をして、それぞれにいま来た道を戻り、11時32分、再び美留和の駐車場へ。

青木「草刈り中は、無心になる。ひたすら一定の動作で、刈り続けます」
蔵崎「悟りの境地ですね(笑)」
青木「それが楽しみです」
貴田「僕はまだ初心者なので、基本に忠実に、右から左のONE WAYを意識しながら刈ってます」
おにぎり、スープ、カップラーメン…和気あいあいとおしゃべりしながら、約1時間の休憩。

12時27分、午後の作業が始まった。A班は、石山林道出口からスタート。午後はB班に同行させてもらう。

B班は石山林道入口近くで、道幅を広げるための草刈りから行うことに。「牧場脇の道に、トラクターの邪魔にならないようにハイカー用の道を造りたいんだけど……とりあえず道を広げますか」

14時15分、石山林道に入り、再び草刈り。「ここは熊が出るんですよ。ひとりで歩くハイカーからは『コワイ……』という声もあって、だから、とにかくササを刈っておく。そうするとハイカーも安心だし、見通しがきいたほうが、熊にとってもいいものね」

今シーズンから新しく設置した、熊除けのためのシンバルにMKTのステッカーを貼っていると、14時52分 A班の姿が見えた。

「とにかくソテツとフキをひたすら刈って、結構大変でしたね。あとブヨも出てきました」。そして倒れた標識はみんなで整えて、15時11分、この日の作業が無事終了した。

美留和の駐車場に戻り、最後に刈払機の掃除をする。刃の欠けがないかなどを確認し、記録のための集合写真を撮影して、解散した。

チームワーク。約6時間(プラス休憩1時間)の整備作業に同行して感じたのは、この言葉だ。弟子屈町の自然を愛し、「MKTを歩く人に向けて“整備”」という手段で心地よさを提供したい」。そんな同じ志を持った仲間がともに作業をし、その時間を楽しんでいることが伝わってくる。彼らが整えた道はきっと快適で、ハイキングをより魅力的にしているに違いない。
