MKT整備REPORT Vol.1「どうやってるの? MKTの整備」

文:井出千種 写真:國分知貴、小林由紀子

私たちが歩いている、摩周・屈斜路トレイル(MKT)。全長約50キロ。この道の整備は、どのように行われているのだろう? MKTを管理・運営する、NPO法人てしかがトレイルクラブ(TTC)。2019年の設立当時から携わっている、藤原仁と小林由紀子に訊いてみた。

弟子屈歴27年の藤原仁(左)と9年の小林由紀子(右)。

Q1.MKTの整備は毎年、何回くらいやっているのですか?

小林 5月から11月までの間に、点検を42回、整備は27回行っています(2024年度)

Q2.点検とは?

藤原 整備の前段階として、2人一組になって、トレイル上に異常がないかを確認します。落枝、倒木、標識などのチェックをしながら、ゴミ拾いまで。その結果をレポートにして、整備のリーダーに伝えます。

笹が濃い場所はハンマーナイフモアで粉砕していく。

Q3.整備は何人くらいで、どんなことをするのですか?

藤原 場所や内容にもよりますが、一回の整備は5人くらい。手ノコ、鎌、刈払機、必要とあればハンマーナイフモアも使って、気持ちよく安全に歩いてもらうための道を造っています。

倒木を見つけたら「倒木注意」のサインをつける。スズメバチの巣を見つけたら、役場に駆除を頼んで、SNSで「危ないですよ」と発信する。そんなこともしています。

トレイル整備中のひとコマ。

Q4.「気持ちよく歩ける道」のために、どんなことを意識しているのでしょう?

藤原 いわゆる登山道はワントラック(単線)だけど、MKTの林道は広めに取って、ふたり並んで歩けるくらいの幅にしています。トレイルって、みんなでおしゃべりしながら楽しく歩ける道がいいな、と思っているので。だからハイカーノートに「歩きやすいトレイルでした!」なんて書いてあると、すごくうれしい。

Q5.MKTの整備を手がけるTTCは、どんな団体なのですか?

小林 「歩く道をつくり、歩く人をもてなす文化を醸成し地域住民と利用者の幸せに寄与することを目的とする。」これを基本理念に掲げて、MKTをはじめ、町内の登山道の整備や維持管理を行いながら、歩くイベントや外来種駆除なども手がけています。

毎年数回行っている「アメリカオニアザミ」の駆除活動。

Q6.参加メンバーは、現在何人くらい?

小林 正会員25名、賛助会員10名(うち1名は法人)。

整備は、年度の初めに会員の中からアルバイトができる人を募って、その中でシフトを組んでいます。今年の整備スタッフは15人。そのうち女性は4人です。

藤原 メンバーにはアウトドアガイドが多い(15人中9人)ので、整備を通してフィールドに触れて、ここの自然を深く知ることができるのもいいことですね。

Q7.MKTの整備はいつから始めたのですか?

小林 本格的には設立の翌年、2020年から。自然へのインパクトを考慮して、昔の道を復活させながら、すでにある道を生かすようにしました。これまで唯一造ったのは、旧釧路鉄道跡。私有地ですが、交渉したら持ち主が快諾してくれて、うれしかったですね。

仁伏半島の整備に着手した時の写真。散策路はしばらく利用されておらず、
朽ちた看板などを撤去するところから始まった。

Q8.整備を始めて5年、苦労も多いのでは?

小林 それはもう、いろんなことが……(苦笑)。

藤原 とにかくアブだよ、すごいんだから。刈払機は熱を発するから、ブワ〜って集まってきて、それはそれは大変……。だけど基本的には、草刈りって楽しい。すぐに成果を見ることができるからね。ストレス発散にもなるでしょう。

小林 あとは摩周岳とか整備していると、歩いている人が「ありがとうございます!」なんて言ってくれて。きっと静かに歩きたいだろうに、うるさくして悪いなぁって思うんだけど。「いやぁ、助かります」なんて感謝されると、やりがいを感じます。

Q9.整備活動費は、どのように捻出しているのですか?

小林 現在は弟子屈町からの委託を受けています。MKTグッズの販売やガイド派遣なども行なっていますが、できれば寄付を募ったり、ハイカーにも協力してもらって、自立していきたいと思っています。長期的な課題ですね。

藤原 高齢化も課題だったけど、最近は若者も増えていい形になってきたかな。弟子屈町は、自然に興味がある若い世代の移住者が多い。そんなことも影響しているよね。

2男1女の父親である藤原は、子供と一緒にMKTを散策することも多い、素敵なパパ。

Q10.最後に、TTCを続ける目的を教えてください。

藤原 歩く文化を、このまち、弟子屈町につくりたい。「トレイルは血管のようなもので、人が動けば、いろんなものが動いていく」と教わったことがあるのですが、まさにその通り。それに「『歩く』ことは、足に刺激を与えて、脳にも刺激が伝わって、『考える』ことにつながる」これも先達の名言。トレイルって、いろんなことをゆっくり考えるいい機会なんです。人間、やっぱり考えなきゃダメでしょ。

小林 観光地という視点から考えると、長期滞在を促すためには、歩く道ってすごく重要。いい道がたくさんあれば「今日はここを歩いて、明日はどこを歩こう」って、来訪者の楽しみがずっと続くから。MKTを実際に歩くと、カルデラ内のことが全部見えてくる。湖も森も火山も、全部凝縮されている。すごい価値がある場所だなぁって感じています。だからあとは、それらを歩く道を、いかに整えられるのか……。

MKTが少しずつでも認知されて世界中のハイカーがやって来れば、観光事業者も、地元の農家の人も、ここに住んでいる人たちみんなが「世界各国の人が私たちのまちを歩いている」って感じて、楽しいじゃないですか。だから世界中から歩きに来て欲しいし、そのためにしっかり整備していきたい、って思います。

摩周湖の展望台から眺めた景観に強く惹かれ9年前に移住した小林さんは、
この地の魅力を深く知る自然ガイドとしても活躍する。

2020年にオープンした「摩周・屈斜路トレイル(MKT)」は、今年で6年目を迎える。話を聞いて改めて感じるのは、トレイルが誕生するまでにかかる時間と努力と“思い”はハンパじゃない! ってこと。そして、それを成し遂げてしまう強者がこの町にいることを誇りに思う。ハイキングと同じで、ゆっくりでも、一歩一歩進んでいくと、理想とする目的地へ確実に近づいていける気がする。ハイカーと地域が融合し、ともに享受できるトレイルが、近い将来に実現することを願いたい。

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Writer

『MKT MAGAZINE 』とは、摩周・屈斜路トレイル(MKT)を歩くことが『もっと面白くなる』マガジン。

総距離50km(2023年4月現在)のトレイル上とその周辺には、
火山、湖、温泉、それらがつくりだす独特な自然景観と植生、
アイヌの歴史、そして現在ここで生活する人々の暮らしなど
この土地ならではの魅力と物語が詰まっています。

『MKT MAGAZINE 』ではその魅力をよく知る人々、MKTを愛する人、摩周・屈斜路のフィールドを愛する人と共にMKTならではの情報を発信していきます。

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